介護のハウツー
2016年10月17日
高齢者のうつに介護士はどう対応する?原因や症状を知って対処しよう
介護士にとっての大きな問題の一つに、高齢者の方のうつ病があります。今回は、このうつ病にはどのように対処すべきなのかを見ていきましょう。まずは、うつ病の原因や症状を理解する事が大切です。
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うつ病の種類
大うつ病性障害
一般的にうつ病と言われる症状が、これにあたります。気分や活動性の低下、物事を考える事ができなくなる、睡眠障害が出てくる、自殺願望、食欲の低下などといった症状があります。これらが二週間以上続くと、大うつ病性障害と診断されます。
双極性気分障害
これは、いわゆる躁うつ病の事を指します。躁うつ病の症状のみが発症する事は少なく、一定期間を経て、うつ病の症状と入れ替わる事が多いとされています。突然かっとなって怒りやすくなる、対人関係が上手く行かない、妄想や被害妄想、睡眠障害などといった症状が現れる事が特徴です。
うつ病の症状
症状として、以下のようなものが多く見られます。
- 物事に対する興味や関心が無くなる
- 楽しい、嬉しいといった感情が乏しくなる
- 食欲障害
- 睡眠障害
- 疲れやすくなる、気力が無くなる
- 強い自己嫌悪、自分を責める
- 集中力の低下、物事を考えられなくなる
- 自殺願望が出てくる
といったものが挙げられます。
また、高齢者の方の場合は、精神的な症状よりも身体的な症状が出やすい傾向にあります。めまいや立ちくらみ、ふらつき、耳鳴り、手足の痺れなどの自律神経系の症状や、頭痛や胃腸の不調、腰痛といった症状を訴える方もいらっしゃいます。
また、妄想が出る事も多く、お金があっても無いと思い込んでしまう妄想や、自分は悪い人間だと思い込む妄想もあります。
うつ病の原因
人間は、脳からの命令の元で身体や心が働き、生きています。この脳からの命令は、動作だけではなく感情をも司っていて、これらは、脳からの神経伝達物質やホルモンを介して身体や心に伝えられます。
この神経伝達物質の中でも、うつ病と関係していると言われているのが「セトロン」と「ノルアドレナリン」の二つです。通常、脳の神経細胞からこれらの物質が出され、受容体に伝わり、そうして私達は意欲や生きる上での欲求を感じる、というメカニズムになっています。
しかし、これらの物質の量が低下してしまうと、受容体まで届かなくなります。そして、意欲や欲求といった感情が起こらなくなっていき、次第に身体にも影響が現れてきます。これが、うつ病が起こる仕組みになります。
高齢者の方の場合は、年齢に伴う体力や気力の低下、家族やパートナー、友人などの親しい人との別れ、一人で暮らす寂しさといった事も、大きな原因となります。
高齢者のうつ病は、認知症との判別が難しいとされています。これまでにうつ病になった事がないか、また、家族にうつ病になった事がある人はいないか。慢性的な持病が無いか。一人暮らしだったり、経済的に困ったりしていないか。そういったうつ病の原因となりやすい特徴がないかを見てあげる事も大切です。
治療方法
高齢者の方の場合も、一般的なうつ病の治療と同様にお薬を用います。抗うつ剤は、服用し出してからすぐに効果が現れる訳ではなく、多少時間が掛かります。また、用いる薬の種類や飲む量によって差はありますが、高齢者の方の場合、副作用が出やすい傾向にあります。
主な副作用の症状として、眠気、目がかすむ、めまい、口が渇く、手が震える、便秘、排尿困難といった症状があります。副作用を気にするあまり、勝手に薬を飲まなくなる方もいらっしゃいますが、それは避けましょう。薬が効いてくるのと副作用の出現にはどうしても時間差があるので、きちんと飲み続ける事が必要です。
また、お薬以外にも、行動療法があります。世代が同じ患者さん同士で何人かのグループを作り、お互いに病気の症状や苦しさ、自分の人生などを話し合うものです。
自分と同じ病気やつらさを持っている人達と話し合う事で、自分だけがつらいという孤独感から解放されますし、お互いに良い刺激を受ける事ができ、うつ病の回復に繋がるのです。
高齢者のうつ対策まとめ
高齢者の方のうつ病は、認知症との違いが分かりにくく、周りの人が気付いてあげるのが遅くなってしまう事も多いものです。しっかりと見極め、寄り添って治療を進めて行く事が大切です。