介護のハウツー
2016年09月12日
高齢者の皮膚の乾燥に注意!介護士が押さえたい利用者の肌トラブルの対策
寒い季節になると肌の乾燥が気になるようになります。特に高齢者は肌の乾燥が原因で肌トラブルを起こしやすくなるため、肌の乾燥を防ぐ対策をとる必要があります。特に湿疹も何も出来ていないのに肌をかゆがる高齢者は多く、肌の乾燥する季節になると高齢者のうちの7割弱もの人が肌にかゆみを感じるという調査結果もあります。
高齢者の肌にかゆみが起こるメカニズム
本来肌には皮膚の表面から分泌される皮脂や汗などが外部の刺激から肌を守るバリアの役目を果たします。さらに角質細胞の中にある水分をつなぎとめる効果のあるセラミドによって潤いのある肌をキープすることが出来ます。
けれども年齢を重ねてゆくと自然に体の新陳代謝が低下し、皮膚から分泌される皮脂の量も減少し、さらに肌の保水にか欠かせないセラミドも減少してしまいます。若い年代ならば肌の表面を洗い流して皮脂やセラミドを取り除いても短時間で再び補給されるのですが、高齢になると肌が潤いを取り戻すまで長い時間がかかるようになります。
そして肌のセラミドの減少で肌を守る機能が低下したままの状態だと、どんどん肌の乾燥が進行して様々な肌トラブルに繋がるというしくみです。
老人性乾皮膚症とその原因
老化によって皮膚そのものが潤いを保つためのセラミドや皮脂の分泌が減ることで、すねやウエスト周りなどを中心に肌全体がざらついたり、ひび割れや粉を吹いたような状態になるのが老人性乾皮膚症の症状です。こうした皮膚が乾燥した状態になると、ごく弱い刺激でも肌がかゆみを起こします。
高齢者の9割以上が冬には老人性乾皮症の症状があり、さらにその約半数は強いかゆみを訴えているといわれています。加齢によって皮脂腺から分泌される皮脂、角質細胞間で水分を保持する役割のあるセラミド、角質細胞の中に存在する天然保湿因子のNMF、これらの物質が減る事で乾燥を引き起こして肌のバリア機能が低下します。
一日中空気の乾燥した部屋の中にいたり、熱いお湯に長くつかる、体を洗うときにごしごしとこするといった習慣が高齢者の皮膚を更なる乾燥状態にしてしまうことに繋がります。
高齢者の皮膚の日常的なケアのポイント
高齢者の肌の乾燥による皮膚トラブルを予防するためには、まずは入浴方法の見直しが必要です。冬はそれでなくても大気の湿度が低くなる上、暖房の効いた室内、電気毛布などの暖房器具の使用によってさらに皮膚が乾燥しやすくなります。
まずは室内の湿度を60パーセント以上にしておくことが大切です。そして入浴は最も皮膚の潤いをとることになりやすいので、刺激の少ない洗浄剤を使って、綿などの天然繊維の柔らかなタオルを使用してやさしく洗うようにします。そして入浴後に肌が乾燥してしまう前に薬用の保湿クリームを使ってケアすることも大切で、肌にセラミドを補える成分の入ったものを選ぶことも効果的です。
また、寝たきりの人や入浴できない状態の時には清拭を行いますが、清拭で肌が綺麗になったあとにも保湿効果の高いクリームなどを使用して潤いを与えておくようにします。清拭は介護されている人が気持ちよいだけでなく、介護者にとっても全身の観察が出来る機会なので、皮膚トラブルなどを見つけやすくなるというメリットもあります。
肌の状態は一人一人異なるので、常に利用者の方の肌の状態をチェックし、その人の肌の状態によって保湿剤などの塗り方を変えることが大切です。肌が傷ついていたり弱って傷つきやすくなっているような時には、肌を引っ張ることなく手のひらにクリームを乗せて皮膚温でなじませてからやさしくまぶすよう肌の上に広げながら塗るようにします。
介護士の仕事は忙しく、中々一人一人丁寧なケアをする事が出来ないことも少なくないのですが、その人に合ったケアが肌トラブルを防ぎ、日ごろからの適切なスキンケアによって利用者の方との信頼関係が生まれる事にも繋がります。