認知症の原因
2017年08月01日
アルミ鍋などのアルミニウムと認知症は関係あるの?気になる認知症の原因物質とは
認知症は高齢化の進行する日本では特に大きな問題としてとらえられることが多く、様々なメディアでも予防法などに関する特集が組まれる機会が増えています。けれどもその原因や治療法に関してはいまだ判明していない部分が多い病気ですが、原因になると思われる物質など少しずつそのメカニズムの解明が進んでいます。
目次
認知症の種類と発症のメカニズムとは
年をとれば誰もが物忘れなどの症状が現れるように感じますが、高齢になった人全員が認知症を発症するわけではなく、単に年を取れば誰もが認知症になるものではありません。
認知症は病気の一つで、認知症を発症した結果脳細胞の多くが失われて回復の見込めない状態に陥るというものです。そして認知症を発症するのは主にアルツハイマー病と脳血管性認知症の2種類で、この二つで認知症全体の9割を占めると言われています。
中でも最近急速に増えているのがアルツハイマー病で、人口に占める高齢者の割合が増加するに伴って認知症の患者数も増加すると言われています。アルツハイマー病は大脳の広い範囲に萎縮が起こる原因不明の病気で進行性の認知症です。
現在のところ根本的な治療法は確立していませんが、予防や症状の進行を遅くする方法に関しての研究が進んでおり、早期に発見することで病気の進行を抑制する効果が期待できるとされています。
脳血管性認知症は、脳卒中による脳梗塞がいくつも起こる事で発症する認知症です。その為脳卒中を予防するために食生活や日常的な生活習慣を改善することが病気の予防や症状の悪化を抑えることにつながるとされています。
レビー小体脳症とはどんな病気?
レビー小体という神経細胞に特殊なタンパク質が増える事が発症の原因と言われる病気です。アルツハイマー型認知症に次いで認知症の発症患者数が多く、中でも特に男性の発症割合が高いのが特徴の一つであり、様々な自律神経障害が現れる全身性の病気、それがレビー小体脳症です。
パーキンソン症状や幻視、大きな寝言などの症状が最初に現れる事が多く、うつに似た症状も出現するため、診察でうつ病と誤診されることが多いと言われています。頭がはっきりとしている時と意識レベルがかなり低下する時とがあり、それを繰り返しながら病気が徐々に進行してゆきます。
さらに薬の副作用が出やすいという特徴も認められるため、正しい診断を受けていながらも処方された薬の影響で症状が悪化してしまうケースもあります。そして、症状の進行速度が人によってかなり個人差があったり、幻視やパーキンソン症状などが最後まで出現しない人もいるなど、その人によって症状の出方に大きな差があると言われています。
アルミニウムと認知症はどんな関係があるか
アルミニウムはどこにでも存在する金属ですが、水中に溶け出したアルミニウムは体内に吸収されやすくなり、やがて脳に達して毒性を発揮することが心配されています。
地理的にアルミニウムの含有量の多い飲料水を利用する地域ではアルツハイマー病が多いという調査結果もあり、アルミニウムと認知症との関係が疑う余地のないものだという意見がある一方で、アルミニウムと認知症の発症とを関係づける事に対する異論もあります。
ただし、日常的に使用するアルミ鍋や缶ビールなどに含まれるアルミニウムの濃度は、それ自体が認知症の直接的な原因になる程の濃度ではないため、必要以上に身の回りのアルミニウムに対して警戒心を持つことには否定的な意見が少なくありません。メディアなどで取り上げられることで認知症への恐怖心をあおられた結果、極端な排除行動に走ってしまうのは意味のない事だとも言われています。
アミロイドβと認知症の関係
認知症の多くはアルミニウムではなく脳内にアミロイドβとタウタンパク質が蓄積することで脳神経細胞が死滅することが原因で起こると言われています。アミロイドβとは脳神経細胞の老廃物にあたるもので、脳内に蓄積される量が増えると脳神経細胞先端部を傷つけるとされる物質です。
タウタンパク質とは脳神経細胞の中に蓄積することで神経細胞そのものを死滅させてしまう物質です。初期の段階の脳内細胞は、まずはアミロイドβの蓄積が始まり、そこからおよそ10年ほど経過してからタウタンパク質の蓄積が始まり、その時点からさらに15年間もの間この二つの物質は脳内に蓄積し続け、脳神経細胞にダメージを与えます。
その結果やがて認知症を発生させることに繋がるため、認知症の発症に至るには初期段階からおよそ25年間もの長い期間がかかると言われています。つまり、例えば70歳で発症する人の場合、25年前にあたる45歳頃にはすでにアミロイドβの蓄積が始まっている事になります。
そう考えると認知症は高齢になってから何か対策を摂ろうとしてもタイミング的にはすでにその原因が脳内でどんどん進行している可能性が高いため、40代で認知症予防に取り掛かる事はけして早くはないと言えます。
アルツハイマー型認知症の原因
認知症の中でも多くの割合を占めるアルツハイマー病の原因とされるのがアミロイドβの蓄積であることから、脳内にアミロイドβをなるべく溜めないようにすることがアルツハイマー型認知症の予防につながるという見解が注目を集めています。
そして2型糖尿病の患者にはアルツハイマー型認知症になる確率が一般の人と比較したときに約2倍も高いと言われています。アルツハイマー型認知症の原因とされるアミロイドβを分解するのはインスリン分解酵素です。この酵素がしっかりと作用することで体内のアミロイドβの蓄積を予防することに繋がります。
ただし、血中インスリン濃度が高まるとインスリン分解酵素の働きが低下するため、体内にインスリンが多い人ほどアルツハイマー病の発症割合が高くなると考えられます。そして体内にインスリンが多いと言われるのは2型糖尿病、糖尿病予備軍、肥満、運動不足などの人だと言われています。
70代でアルツハイマー型認知症を発症する原因が40代から始まっているのだとすれば、これらの原因を取り除くために生活習慣を見直すことも、アルツハイマー型認知症の予防に大きな影響を与える事になります。
脳内にアミロイドβが増えすぎないようにするためにできる事
まずは食生活の中で炭水化物を摂りすぎないように注意した食生活を心がける事です。また、出来合いのものを食べるよりも材料を見てあれこれと考えながら料理することが脳の活性化につながるため、積極的に料理を楽しみながらバランスの良い食事を作る事がおすすめです。
さらに、軽めのジョギングやウォーキング、体操などの有酸素運動は脳を活性化させ肥満の予防につながります。そしてアミロイドβの蓄積を予防する効果が期待できるのが、実は睡眠だと言われています。
質の良い睡眠をきちんととる事が大切で、そのためには昼間30分程度の昼寝をすることも有効だとされています。ただし、昼寝を何時間もしてしまうと夜眠れなくなってしまい、かえって睡眠を邪魔することにつながりかねないので、意識して短時間の睡眠にとどめるようにすることが大切です。
アルツハイマー病の予防治療への期待
脳内にアミロイドβが蓄積することが原因とされるアルツハイマー病を予防するため、現在予防ワクチンの開発に関する研究も進められています。動物実験による効果が認められれば臨床試験をめざすこととなり、やがて認知症の発症の予防が可能な新薬が開発されることへの期待が高まっています。