介護の基礎知識
2016年05月15日
介護士もたん吸引の処置ができる!「喀痰吸引等制度」と研修を知ろう
目次
痰の吸引ができなくて、困ったことは?
医療・介護の現場において、看護師は一通りの技術を行うことができます。点滴の針を刺すのも、実は看護学校で習うのではなくて、国家試験合格後に現場に入ってから初めて行うのですが。同じように吸引も、看護師は学生時代には経験していません(実習では行いません)が、看護師の国家資格を取得したあとは、ひよっこの新米ナースでも吸引が認められます。
しかし、介護士はこのような処置をすることが認められていません。痰が絡んでいると思えば、看護師を呼びに行かなくてはなりません。夜勤などで看護師が少ない職場や、交代で休憩に入っている時間帯に、明らかに痰がゴロゴロしている・・・そんなときも、看護師を呼ぶか起こすかしなくては、痰をとることができません。
高齢者にとって痰の吸引というのは、切っても切れない関係です。場合によっては、吸引をおろそかにしたせいで痰が気道を閉塞させて亡くなってしまう・・・そんなことも、現場ではあるのです。医療機関の場合、仮に自分の部署の看護師が別の処置で手が離せなかったり、仮眠中であったとしても、最悪場合隣の部署の看護師に応援を頼むということも可能です。しかし、そういった対応のできない現場というのが、現実には存在するのです。
介護関連施設の場合
→ 看護師が常勤でいないことが多い
グループホーム
老人保健施設
有料老人ホーム
通所介護(デイサービス)
特別支援学級
障害者支援施設
在宅の場合
→ 訪問介護に行くとき
(看護師が訪問するときは訪問看護となり、介護とは別に訪問する)
こんなとき、明らかに痰がゴロゴロしているのに、自分では痰が吸引できない・・・と、もどかしい気持ちになったことがあるでしょうか?怖いな・・・と思いながら、痰がゴロゴロしたままで食事介助をしているなんてこともあるのでは?
一定の研修を受ければ、介護士でも吸引が可能に
そんな現場の声や実状から始まったのが、「介護職員等による喀痰吸引等の実施のための制度」です。介護士でも、都道府県知事又はその登録を受けた者(登録研修機関)が行う研修(喀痰吸引等研修)を受け、その研修過程を終了したと都道府県知事が認定した者には、「認定特定行為業務従事者認定証」が交付されることになったのです。
この認定特定行為業務従事者認定証を与えられた介護士は、看護師不在の現場において自己判断で吸引処置ができるようになるのです。(ただし、医療機関は対象施設とはなりません)。研修は、認定された登録研修機関において、講義プラス各行為のシミュレーター演習からなる「基本研修」と、実地研修を受ける必要があります。
厚生労働省のホームページに詳細が記されていますから、参考にしてください。
また、H27年度から、介護福祉士はその養成施設における授業の中で『医療的ケア』として、講義+演習(+実地研修)を実施しています。
痰が引けたら、もっと安全に食事介助できるのに・・・。痰が詰まりそうで怖いけど、看護師の仮眠が明けるまでまだ時間がある・・・。呼吸状態がおかしい・・・痰が詰まった!?もっと利用者さんのために、もっとできることがあるのではないか?
そんなときに、喀痰吸引研修を受けていれば、自分の手で吸引することが可能になります。日々介護をする中で、そんな思いを抱えている方には是非、この喀痰吸引研修を受けて、「認定特定行為業務従事者認定証」を取得して欲しいですね。介護士としての活動の幅・可能性がより広がることは、間違いありません。