介護のハウツー
2016年10月14日
介護で気を付けたい廃用症候群とは?予防のためのヘルパーの心がけ
高齢者だけではなく、病気になったり動くことが出来なくなればベッドに寝ていることはごく自然なことです。
病気の治療のために安静にすることは大切なことなのですが、過度に安静にしたり、長い間動かさずにいたりすることは体に思わぬ症状を招くことになります。特に年々体が思うように動かなくなっていきがちな高齢者にとってはその影響はとても大きなものです。
気づかないうちに進んでしまう廃用症候群
高齢になって怪我や病気になれば安静を保つために横になっていることが多くなります。治療のためには安静はもちろん重要なことなのですが、体を動かさずにじっとしていることが増えることで、本来なら正常だった体の機能まで衰えさせてしまうことに繋がることがあります。
年をとって体を壊して寝込んでしまったことが引き金となって坂道を転げ落ちるように体力がなくなって寝たきりになってしまうという人が少なくないのも、いつの間にか進んでしまった廃用症候群によるものです。
多くの場合高齢者自身がほとんど意識しないうちに症状が進行してしまい、気が付いたときには歩くことはおろか体を起こすことさえ出来なくなってしまうという危険性が潜んでいます。高齢になって身体機能が衰えるとちょっとした段差にも躓きやすくなります。
そして転倒して骨折すると怪我が治癒するまでの間安静状態ですごすうちに筋肉が衰え、結局は寝たきりの状態になってしまうのは、安静中に筋肉の収縮が行われなくなることで廃用症候群が起きてしまったためです。
廃用症候群の種類と症状
廃用症候群になることで具体的に現れる症状としては、筋肉がやせ衰えたり関節の動きが悪くなることが上げられます。そして骨ももろくなり、ちょっとした事で骨折に繋がりやすくなります。
心臓機能が低下して心拍数が低くなったり、長時間横になっていて急に立ち上がったときにふらつきを感じることもあります。物を飲み込む力が低下して、食事のときに食べ物が誤って肺に入って誤嚥性肺炎を起こしたり、血管に血の塊が詰まってしまう症状なども起こりやすくなります。
長時間寝ていることで神経が圧迫されて麻痺が起こったり、長期間体を動かすことが出来なくなることで床ずれが起こることもあります。そして家に閉じこもりがちになって精神的に落ち込んでうつ状態になってしまい、人との接点がなくなることで認知機能の低下やせん妄、意識障害等を起こすことにも繋がります。
廃用症候群の兆候が見られる時の対処法
どんどん新しいことを吸収し体が成長してゆく子供とは異なり、高齢者は自分自身で出来ないことが徐々に増えてゆくようになります。
一人でさせるのは危険だからとつい過剰な介護や介助をしてしまいがちですが、介護に当たる介護職は本人が出来る範囲の身の回りの動作はなるべく自分でしてもらうようにすることが大切です。
少しの手助けがあれば歩けるのに、とかく車椅子などに頼りすぎると体はどんどん動かなくなってしまうので、歩く機会を作ることも大切です。また、高齢者本人の気持ちが弱くなる事が廃用症候群を起こすことに繋がるケースも少なくありません。
本人がやる気を起こして少しでも前向きな気持ちになってもらえるように自立心を尊重する介護を心がけることが大切になります。なんでも手助けをしてもらえる状態ではなく、本人の意欲を失わせないように、ゆっくりと見守りながら本人と相談してちょっとした目標を決めて支援するというのも大切です。
廃用症候群を予防するために気をつけたいこと
廃用症候群を予防するためにはなるべく体を動かすことです。安静時にベッドに寝たままの状態のときでも、動かせる状態なら足を回したり手足をマッサージすることも予防に繋がります。
おなじ姿勢をとり続けることのないように配慮し、血流を良くすることを心がけるようにします。そして精神的に落ち込まないように、気持ちの面でケアすることも介護職の大切な仕事のひとつです。