介護の基礎知識
2016年05月02日
どう改正されるの?2018年の介護保険制度の見直しと介護士への影響
2015年4月から、新たな介護保険制度「介護予防・日常生活支援総合事業」のもとで介護サービスが行われていますが、この変化は介護士や介護事業者、支援者にとって厳しいものでした。厚労省によると2018年にも、介護保険制度の改正を予定されており、今後も来る超高齢化社会に向けて、さらなる是正のために介護保険制度を改正していく予定です。そこで、2018年の介護保険制度改正について、内容や考えられる変化についてご紹介していきます。
介護保険制度の見直しがなぜ繰り返されるのか
日本は、これからどんどん高齢化が進んでいきます。それに伴って、介護や医療など、高齢者が頻繁に利用することになるサービスに注ぐ国の予算がますます必要になっていきます。そこで、現在の団塊の世代が後期高齢者となり始める2020年に向けて、社会保障関係費を徐々に絞ってくことで、現状程度の増加割合に抑えようと考えているのです。
このような改正は2012年頃から徐々に始まっており、生活保護の受給や介護報酬を見直すことで、生活保障関係の予算を毎年1200億円から1700億円削減してきました。しかし、生活保障関係の予算をすべて削られたというわけではありません。マンパワーの確保や認知症の高齢者への対策など、高齢化社会における生活保障をより充実させるために必要な社会保障費については、この3年間で逆に増額しているのです。つまり、2020年に向けて、不要だと思われる予算は削り、必要と思われる予算は増やす、というように、財政をより健全化していくことが目的となっています。
2015年の介護保険制度改正
2015年の介護保険制度改正で何が変わったか、まずは確認してみましょう。
- 一定以上の所得者は介護保険利用料が1割から2割負担に
- 介護保険料支払い基準の見直し
- 一定以上の所得者の高額介護サービスの上限額アップ
- 施設サービス利用料について提訴特車向け軽減措置の厳格化
- 特別養護老人ホームは要介護3以上に入所制限
- 要支援者のためのサービスが地域主体に
- 宿泊を伴うデイサービスが全国基準の届け出制に
- 小規模デイサービスは地域密着型サービスに移行
- サービス付き高齢者向け住宅が住宅地特例対象に
- 各市区町村がケアマネージャーを指定
- 地域ケア会議が努力義務に
実は2015年、介護報酬改定で全体的に下がりました。一方で同年8月には一定以上の所得がある人の事項負担額が2割になるなど、人によっては負担増となったケースもあります。
改正のための論点は?
2018年の改正に向けた論点は、以下の7点です。
- 保険者機能の強化などによる地域の実情に応じたサービスの推進
- 介護療養病床のあり方なども含めた医療と介護の連携
- 地域支援事業・介護予防の推進
- サービス内容の見直しや介護人材の確保
- 軽度者への支援などを含めた給付のあり方
- 利用者負担や費用負担のあり方
- 保険者の業務簡素化や被保険者範囲などその他の課題
これらの中でも、介護療養病床のあり方については、経済・財政再生アクションプログラムで年内に結論が出るといわれており、現在も意見の取りまとめが行われています。
介護士への影響は?
このような財政の健全化は、介護の事業者やサービスを利用している高齢者にとって、さまざまな影響を与えてきました。中でも、地域包括システムの構築推進と、利用者負担の公平化への影響が大きかったといわれています。これによって、介護事業者はもちろん介護士にとっては厳しい変化もありました。
2018年の改正は、大まかに言うと、「施設での介護から、地域での介護へ」とシフトしていくことを目標にしています。今後増えていく高齢者が、介護を必要としないよう地域と医療が連携をしたり、何らかの疾病や障害がある高齢者でも、その疾病や障害とうまく付き合いながら自立できるように支援したりすることを掲げています。これによって、これまでの介護施設とは異なるサービスやケアが必要になったり、サービスを受ける高齢者の層も変わってくる可能性があります。これまでの介護施設の形が変わることで、介護士に求められるスキルや心構えなども変わってきます。
また、介護保険制度や医療保険制度が変わることで、報酬や収入面でも変化が起こるかもしれません。来る超高齢化社会に向けて、負担が偏ることなく、無駄なものを省き、必要なものに力を注ぐための体勢が整えられようとしています。しかし、この改正はあくまで政治や経済の観点から見たものであって、実際に介護の現場で働いているスタッフにとっては厳しい変化となるかもしれません。高齢者を支えていく介護の世界で活躍している職員にとって、より働きやすくなるような改正に期待したいところです。