認定介護福祉士
新しい認定介護福祉士の資格
高齢化が進み、さまざまな施設やサービスの場で介護職のニーズが高まっています。さらに約800万人いると言われている団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる「2025年問題」に備え、国内では介護の専門職である介護福祉士の数を増やそうとする動きがあります。そういった動向の一環として新しく誕生した資格が認定介護福祉士です。認定介護福祉士という資格を作ることで介護福祉士の資質を高めることや介護の資格取得の複雑さを見直すことを狙いとしていますが、それ以外にも利用者の生活の質の向上のほか、さまざまな社会的成果が期待されると言われています。
認定介護福祉士制度の狙い
認定介護福祉士の制度が検討された背景には、
- 利用者の生活の質“QOL(クオリティー・オブ・ライフ)”の向上
- 介護と医療の連携強化や適切な役割分担
- 地域の包括的なケアの推進
- 介護サービスの高度化に対するニーズに応える
- 介護福祉士の社会的評価を高める
- 介護福祉士のキャリアパスの整備
以上のような狙いがありました。
認定介護福祉士の役割
認定介護福祉士は、介護チームのリーダーに対する指導やマネジメントを行い、介護チーム自体のサービスの質を向上させる役割を持ちます。また、利用者に対する生活支援において他の資格者と介護チームをうまく連携させる役割も担います。国家資格でもある介護福祉士の上位資格である認定介護福祉士は、介護職員を取りまとめるリーダーや主任といった立場の人を指導する立場であると言えるのです。
認定介護福祉士になるには
介護福祉士の上位資格である認定介護福祉士になるためには、介護職員初任者研修や実務者研修を経て国家試験をクリアして介護福祉士の資格を取得しなければなりません。しかし、介護福祉士の資格所得者だからといってすぐに認定介護福祉士になれるものではなく、それ相応の経験や実績が必要とされます。厚生労働省の資料によれば、介護福祉士としての実績を7~8年以上積み、実際に介護チームのリーダーとして実務経験を持っている人、さらに施設介護と在宅介護の両経験を持っているというのが、国が想定する要件とされています。ただし、場合によっては養成研修などで経験不足を補う方向で検討されているようなので諦めてはいけません。
認定介護福祉士養成研修について
認定介護福祉士の養成研修カリキュラム検討やモデル研修実施などを行っている一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構のホームページによると、認定介護福祉士養成研修というのはⅠ類とⅡ類によって構成されています。
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類
介護福祉士の養成課程では学ぶことのない知識(リハビリ、医療的ケア、福祉用具や住環境、認知症ケア、心理・社会的支援など)について学びます。また、利用者の尊厳保持や自立支援といったことを踏まえた介護サービスを、5~10人で編成されるチームのリーダーに対して指導する知識を習得します。200時間以上受講すれば、機構が認めた一部研修についてはレポート提出や試験での免除が予定されているそうです。
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類
Ⅰ類の研修で得た知識を活かして、根拠を基にした自立ケア実践の指導力を得るための研修です。また、指導力以外にも考える力や創意工夫する力など、応用力を養成し、さらに介護サービスの管理に必要とされる各ツールの整理や改善の知識についても学んでいきます。他にも、チーム運営やサービス管理、人材育成などといったさまざまな項目の専門的理論を学ぶことで、地域マネジメント(利用者を中心とした地域づくり)ができる力を養います。
Ⅰ類の研修の受講条件として、介護福祉士として5年以上の実務経験(科目によっては実務経験を問わない場合あり)が必要とされている他、望ましい経験として、少チームのリーダー経験や生活支援の経験があります。また、Ⅱ類の研修はⅠ類の研修が修了していることが必須条件となっています。研修には500時間を越える受講時間が設定されていますが(免除されることもあり)、これだけの時間の研修を受講するためにはそれ相応の費用が必要になることが予想されます。
認定介護福祉士に求められる実践力は?
認定介護福祉士にはさまざまな実践力が求められます。以下に具体的な実践力についていくつかご紹介するので、ぜひ確認してみてください。
- どのような利用者に対しても最善の個別ケアができる
- リハビリの知識を応用したケアで利用者の生活機能を維持向上できる
- 認知症の周辺症状(BPSD)軽減
- 心理的なケアや終末期ケアの実施
≪介護実践力≫
- 利用者やその家族のニーズに気づき介護計画に反映できる
- 介護チームのリーダーへのリスクマネジメントができる
- 介護チームの意識改変ができる
- 新しい知識や技術を介護チームに浸透させることができる
≪介護チームの指導やマネジメント力≫
国が想定する要件だけでなく、上記のような介護実践力や介護チームのサービスマネジメントをする力も求められるのが認定介護福祉士なのです。
認定介護福祉士と介護福祉士の違いは?
仕事における大きな違いとして、認定介護福祉士の場合、少チーム(ユニット等、5~10人のチーム)のリーダーへの指導であったり、看護やソーシャルワーカーといった他業種のチームとの連携といった中核的な役割が求められます。したがって、実際に利用者への介護サービス提供の機会は、介護福祉士よりも少なくなることが予想されます。また、国家資格である介護福祉士に対して、まだ認定介護福祉士の資格については国家資格になるのか公的資格になるのかが最終決定していませんが、国家資格になる可能性は低いと言われていますので、資格のタイプにも違いが出ることが考えられます。
認定介護福祉士と専門介護福祉士の違いは?
認定介護福祉士と同じく、介護福祉士のキャリアアップとして取得できる資格に専門介護福祉士があります。専門介護福祉士は、認知症ケアや介護施設などの運営管理といった専門的な知識を習得し、管理職として職員の教育や指導に携わることもある資格で、国家資格ではなく介護福祉会という団体が認定している民間資格です。専門介護福祉士は分野別の認証になるため、例えば認知症の専門研修を修了すれば「認定専門介護福祉士(認知症)」となります。介護福祉士の上位資格が認定介護福祉士であるのに対し、専門介護福祉士はさらに特定分野の専門性をを高めたことの認定(スキルアップ)と考えておきましょう。
認定介護福祉士の制度はいつから開始?
現在、認定介護福祉士の制度がいつから始まるかについては未定となっていますが、2015年12月1日には養成研修を行う一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構が設立され、資格制度の開始に向けて受験資格・条件や基準といった詳細について協議が進められています。ちなみに2025年には、介護福祉士のうち2~3%の人が認定介護福祉士になることを想定し、検討が進められているそうです。尚、認定介護福祉士の資格取得の第一関門とも言える介護福祉士の資格ですが、2016年度の試験から、実務経験3年以上という受験資格から、実務者研修修了が必須となったこともあり、深刻化する高齢化への対策や介護に関する資格整備の動きがここにきて見られているのかもしれませんね。
認定介護福祉士でキャリアアップを目指す!
介護福祉士のキャリアパス整備という一面をもつ認定介護福祉士の資格ですから、恐らくお給料アップといった待遇面の向上にも繋がるのではないでしょうか。漠然と介護福祉士として働くよりも、目指すものがあったほうがやる気も起こると思います。介護職のキャリアップとして介護福祉士よりも合格率が低いとされるケアマネージャーを目指すのも良いかもしれませんが、認定介護福祉士を目指すというのも良い選択肢だと思います。ただし、認定介護福祉士になるためにはそれ相応の実力が必要となりますから、研修制度や教育制度が整った職場で働くというのが、必要不可欠かもしれませんね。