喀痰吸引等研修
介護でできる業務の幅が広がる喀痰吸引等研修
喀痰吸引研修は、介護職員の業務を広げることのできる、スキルアップにつながる資格の一つです。
介護関連の資格は旧ホームヘルパー2級資格時代から、何度かの改正が行われてきました。当時から問題とされていたのが、たん吸引を必要とする、いわゆる「寝たきり」になっている高齢者の介護でした。要介護の程度が重度となるほど、必要とされる介護に、医師看護師でなければ行ってはいけない「医療行為」が増えていきます。必要な介護を施すために医師・看護師の訪問を待たなければならず、そのために要介護高齢者の様態が悪化する状況が繰り返されてきました。この打開策として考えられたのが、特定の医療行為に関してのみ、研修を受けることで介護職でも行ってよい、とする法律の改正で、その代表的な資格のひとつが喀痰吸引等研修です。
喀痰吸引等研修を修了すると、人工呼吸器を使用している患者や要介護者、呼吸器の疾患などでたんの吸引を必要とする人に対して、喀痰吸引等の医療行為を限定的に行うことができるようになります。また、経管栄養に関する資格も同時に取得することができ、経口的に食事をとることができない障害者、要介護者への対処が行えるようになります。介護と重度の身体障害児のケアなどにも関わることができます。資格はニーズに応じて3種類に分かれており、取得にかかる時間や費用も違いがあります。
喀痰吸引等研修の資格のメリット
要介護度の高い高齢者や患者さんの介護に携わることができるようになることで、業務の範囲が広がり転職に有利になります。同時に賃金アップ効果も見込めます。一定の介護資格や実務経験を積んだうえで取得できる資格ですから、資格のあることで介護実務に関する実力が高いことを証明する効果もあります。
就職、転職先としては、
- 介護老人保健施設
- 特別養護老人ホーム
- 障がい者福祉施設
- 訪問介護事業所
などが挙げられます。
喀痰吸引等研修の資格を取るには?
喀痰吸引等研修は、不特定の者対象に喀痰吸引等を行う第1号、第2行研修と、在宅の重度障がい者など特定の者よって次の3種類に分かれています。3号研修は、特定の要介護者、重度障がい者に限定的に、特定の介護者が指定の行為を行う場合に限られる資格で、その分研修の時間と内容も軽減されています。それぞれの研修内容は次のようになります。
第1号研修
基本研修
- 50時間の講義
- 各行為のシュミレーター演習
実地研修
- 口腔内の喀痰吸引 10回
- 鼻腔内の喀痰吸引 20回
- 気管カニューレ内部の喀痰吸引 20回
- 胃ろう内または、腸ろうにより経管栄養 20回
- ・経鼻経管栄養 20回
第2号研修
基本研修は第一号研修と共通、および第一号実地研修の内、気管カニューレ内部の喀痰吸引と経鼻経管栄養を除くもの全て
第3号研修
個別性の高い特定の対象者に対して、特定の介護職員が喀痰吸引等を実施する場合に必要になる研修
基本研修
- 8時間の講義
- 各行為のシュミレーター演習 1時間
実地研修
- 口腔内の喀痰吸引
- 鼻腔内の喀痰吸引
- 気管カニューレ内部の喀痰吸引
- 胃ろう内または、腸ろうにより経管栄養
- 経鼻経管栄養
※それぞれの回数は、実地研修の実施者が受講者が技術を取得したと評価できるまでの回数とする
単独で取得できる資格ではなく、介護関連の基本となる資格を先に取得したうえで所定の実務経験を積んでいることが受講の前提条件となります。基礎となる資格の内容は、取得した年度や内容によって受講資格の有無が変わってきます(取得年度によっては、研修そのものが不要で喀痰吸引ができる場合もあります)。詳細は、研修の開催元に確認すると良いでしょう。
研修は都道府県などの自治体が開催するほか、各地の資格スクールでも主催されています。費用面では第一号研修が一番高く、第3号研修になると、費用的にはかなり軽減されています。
喀痰吸引等研修 資格取得者の声
自分で処置ができるようになるために取得
子育ての手が離れ始めるのと同時に、介護職員初任者研修を取得して介護の現場で働き始めました。最初は比較的要介護度の軽い利用者様のお宅をまわっておりましたが、実務経験を積むにつれて徐々に難しい利用者様のお宅を回るようになりました。痰が詰まって苦しそうなご様子の利用者様を前に「私が対応できれば、すぐに処置ができるのに!」と痛々しい思いをしたことが、資格を取るきっかけになりました。折よく、都道府県が主催する講座に職場から送り込んでいただけたおかげで、働きながら資格を取ることができました。今は、より高度な介護を必要とする利用者様への対応もできるようになり、苦しそうなお姿を見続けることがなくなり、「取ってよかった!」と感じています。
(40歳:在宅介護サービス事業所勤務)
実技が難しかった喀痰吸引等研修
一般職からリストラを機に介護の仕事へ転職しました。働きながら介護職員初任者研修から、実務者研修へと進み、実務が分かってくるにつれて「これだけでは足りない!」と感じるようになりました。29歳の時に当別養護老人ホームへ思い切って転職して、喀痰吸引等研修を受講することにしました。職場での給料やポジションのアップを狙って、費用は20万ちょいかかるのを覚悟で、一番範囲の広い第一号研修を選びました。
(35歳:介護職員)