認知症の対応
2017年06月19日
物盗られ妄想の対応はどうすればいい?認知症による被害妄想の症状の原因と対応
認知症の症状の一つでもある「物盗られ妄想」に手を焼いている介護職職員も多いのではないでしょうか。きちんと理解して対応しないと、介護現場の混乱を招くことになってしまいます。今回は、物盗られ妄想の症状や原因、対応方法をご紹介します。
目次
- 1 症状
- 2
原因
- 2.1 記憶障害や思考能力の低下
- 2.2 心理状態も影響
- 3
対応方法
- 3.1 否定しない、叱責しない
- 3.2 別の話題に変える
- 3.3 その他
- 4 犯人にされたら
症状
大切なものを盗まれたと訴えます。認知症が原因で自分が置いた場所を忘れてしまっているだけなのですが、本人は自分がなくしたとは全く思っていないため探すことはほとんどしません。「ない=盗まれた」に直結してしまい、家族や介護士など身近な人を疑います。介護をしている時間が長い人、身近な人ほど疑われる傾向があります。
物盗られ妄想は認知症の初期の人に見られることがほとんどで、中期以降になると少なくなっていきます。しかし、誰にでも必ず出る症状ではなく、出現には個人差があります。
原因
記憶障害や思考能力の低下
自分で「こうかもしれない」と一度思ってしまうと、そのまま思い込んでしまい、確信となってしまいます。「盗られたかもしれない」が一瞬にして「絶対に盗られた」に変わってしまうのです。目に見える範囲になかったらそれだけで「盗られた」になってしまうこともあります。
心理状態も影響
記憶障害や思考能力の低下だけでなく、本人の不安定な心理状態も物盗られ妄想を引き起こします。身体的な痛みや不調であったり、引っ越しや急な同居、担当介護士の交替といった環境の変化に適応できなかったりすると、心理的に不安定になり周囲に疑いの目を向けることがあります。
介護施設を使用している高齢者の場合「ここに居たくない」といった感情も物盗られ妄想の原因となります。また、家族や介護士に話しかけた際「忙しいから」、「後で」などと言われると、「邪魔者にされた」、「のけものされるかもしれない」と感じてしまい、それが物盗られ妄想として表れる場合もあります。
対応方法
否定しない、叱責しない
疑われれば否定したり怒りたくなってしまいますが、否定しても納得することはありません。反対に、否定されることで逆上してしまう場合があります。疑われても否定せずに「困ったね」などと受け入れる姿勢を見せ、できれば一緒に探してあげると良いですね。
一緒に探しているうちに気持ちが落ち着くことがあります。また、声をかける際は「盗られた」という表現は使わず「なくなってしまった」と言うようにしてくださいね。
別の話題に変える
物盗られ妄想が出ているときは興奮状態にあることが多いので、気持ちを落ち着かせるために話題をそらすのも一つの方法です。一緒に探しながら食事の話題や趣味のことなど、本人が興味を持ちそうな話題を切り出してみてください。別の話題に関心が移っていくことがあります。また、途中でお茶やお菓子の休憩やお散歩を挟むように誘ってみても良いでしょう。
その他
話題をそらしても興奮状態が治まらない場合は、認知症が原因の暴力や暴言を受ける可能性がありますので第三者に入ってもらうか、その場をそっと離れましょう。本人と気が合う職員に間に入ってもらうことで落ち着く場合があります。物盗られ妄想の症状があるこという情報を周囲の人と共有しておくことが大切です。
犯人にされたら
物盗られ妄想の犯人にされてしまった場合は、自分で解決しようとはせず、上司や管理職に報告しましょう。「いつ」、「どこで」、「介護士が何をしていた時に」といった状況を、感情的にならないように話してください。物盗られ妄想の犯人だと疑われると、傷つくこともあるでしょう。
しかし、物盗られ妄想がある本人も、「お金を盗られた」、「誰も信じてくれない」と苦しんでいるのです。ですから、疑われても「病気がそうさせているんだ」、「この人も辛いんだ」と考えるようにし、思いやりを持って対応するよう心がけてくださいね。