介護業界の離職率と低賃金・給料の問題、介護職の離職率は必ずしも高くない?
介護の仕事はきつくて給料が安い、離職率が高いと聞いたことがありませんか?介護の仕事にやりがいを感じていても、家族を養っていくことができないので転職するという話もよく聞きます。では、ここで介護業界の離職率と低賃金(給料)の問題について詳しく考えてみましょう。
介護職の給与と介護報酬
介護職の給与が安い一番の原因は財源である介護保険制度から支払われる介護報酬が一定であることがあげられます。介護業界自体、税金だけで収入の多くの部分を賄っている特殊な業界です。介護の事業者はこの介護報酬の中でしか利益を出すことができないので、職員の給与をあげることができるほど余裕のある事業者はほとんどありません。
また介護や福祉の仕事はボランティア精神をもって行われるもので、収益をあげるためのものではないという前時代的な風潮がいまだにまかり通っていることも問題点のひとつです。その証拠に特別養護老人ホームなどは黒字になると介護報酬が引き下げられるという負のスパイラルに陥っているところもあるほどです。
事業者は給与をあげることができず、そのために職員が辞めていったとしても現在の不況下では新しい人を安い給与で雇えばすんでしまいます。これではいつまでたっても職員の待遇が良くなることはないでしょう。
介護職に対する評価の低さ
国家資格であり、人から尊敬される仕事の代表である医師や看護師たちに近い職種でありながら、介護士の社会的評価は低くなっています。これは介護の仕事が「誰でもできる仕事である」と考えらえているからにほかなりません。
こうした評価の低さに対して厚生労働省が考えた措置が「介護資格取得のハードルをあげること」。資格ばかりが必ずしも重視されない介護業界において、この措置について現場から反対の声が上がっていることは言うまでもありません。
社会的評価をあげるためには給与を高くすることが先決ではないでしょうか。介護保険制度との関連もあり、簡単にはいきませんが、待遇の改善といった面からアプローチする必要もあるでしょう。
介護職の離職率は必ずしも高くない?
介護業界の正社員の離職率は約15%。他の業界の平均が約14%であることを考えると、必ずしも介護業界の離職率は高いとは言えません。しかし実際には経営者の意識が低く、労働環境が劣悪であったり、人間関係が良好ではないことで、離職率が極端に高い職場があることも事実です。こうしたネガティブな要素と介護の仕事の「キツイ・汚い・給与が安い」というイメージばかりが取り上げられ、あたかも介護業界全体の離職率が高いと誤解されているのです。
実際にはやりがいと使命感をもって同じ職場に長く務めている介護職員も大勢います。これからはこうしたポジティブな要素も積極的に世間に知らしめていく必要があるでしょう。